スパイ学・神谷奈緒の事件簿では何が起きているのか?

金田一七四の母、中東
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映画やドラマ、漫画、アニメの主人公となる「探偵」はスパイの素質があります。

高い洞察力と観察力、集中力、忍耐力、そして体力。これらが総じて高い人間は探偵・スパイの素質があるのです。それは言い換えればジェームズ・ボンドやイーサン・ハント、キングスマンと同じです。

さらに「探偵小説」とはもともと「スパイ小説」でもありました。イアン・フレミングの007シリーズも日本では「探偵小説」に分類されることもあります。

私たちの知る「推理小説」と「スパイ小説」の区別は多くが戦後から構築されたものです。戦前、多くの探偵小説家はスパイ小説を書くこともあったといいます。昭和21年にの常用漢字として「」の字が含まれなかったことをきっかけに「探偵小説」という呼称は鳴りを潜め、「推理小説」という呼称が始待ったと言われています。

私たちが知る「推理小説」や「ミステリー小説」は戦後からやって来たのです。

そして、本来、シャーロックホームズシリーズは「推理小説」ではなく、「スパイ小説」でもありました。アイリーン・アドラーのような登場人物は政治的な諜報員、あるいは産業スパイのような役割を担っていましたし、ホームズ自身も、海外勢力からイギリスの機密文書を守る活躍をしていました。

『シャーロックホームズの思い出』の中には「海軍条約文書事件」という話がありまし。これは外務省の高官が依頼されたイギリスーイタリア間で締結された海軍条約文書の謄本を何者かに盗まれるというもの。数少ないスパイ短編の一つです。

『シャーロックホームズ最後の挨拶』の中に収録されている「最後の挨拶」もスパイ短編の一つです。ほぼネタバレになるため詳細は省きます。

目次

スパイと探偵の違い

スパイと探偵は現実世界に於いて異なる職務を担います。

第一に、スパイとは日本語では「敵対勢力の呼称」です。つまり私たちが知る「スパイ」はヒーロー的なイメージがありますが、実際は「私たちの安全を脅かす敵に対する呼称」なのです。本来、私たちの側、例えば日本を守るために働くスパイのことを「エージェント」と呼びます。日本のエージェントも、中国や北朝鮮からすれば「スパイ」となるわけです。中国でも、「間諜」「細作」などは敵対勢力、「工作人員」や「政治指導員」を味方勢力として呼称します。日本語に直せば、スパイとエージェントです。

ちなみに、アメリカではCIAの場合、「エージェント」ではなく「オフィサー」と呼ぶのが一般的だそうです。その中で、スパイ要員をリクルートする職員を「エージェント」または「アセット」と呼称するそうです。「アセット」とは「資産」を意味します。つまり、エージェントにとっての資産となります。

ただし、FBIは捜査官を「エージェント」と呼称しますので、こちらは一般的な理解で大丈夫なようです。

「アセット」とは現地の情報源になる人物や媒体を意味します。「アセット」にはエージェントと協力し、敵地に潜入、情報を収集するアセットと、ダブルスパイ、つまり敵方に所属するスパイであるが、エージェントに協力してくれる人物のアセットも存在します。また盗聴器やカメラなども「アセット」に含まれます。多くの場合、「アセット」は死亡するリスクがあります。

アセットを確保する金田一七四

またなぜ「アセット」と呼称するかと言えば、アセット・エージェントは外国人であることが一般的だからという話もあります。アメリカのCIAやFBIにおいても外国人が就職できないわけですし、日本の公安調査庁や公安警察、自衛隊情報局なども外国人を雇うことはできません。あくまでもオフィサーや自国エージェントはその国の人間で構成されことが固定的であり、リクルーター・エージェントまたはアセットは自国民あるいは外国人で構成されるからです。例えばCIAが日本人をエージェントとしてリクルートするとしても、それはアメリカのオフィサーやエージェントたちの「アセット(資産)」にすぎません。

次に、「スパイ」または「エージェント」は主に「国家」に属する場合が多いです。敵国から自国の安全を守ることを使命としています。しかし、その愛国心には差があります。どの国のスパイも、愛国心がある場合もありますが、多くの場合は自尊心が強いことが挙げられます。「自分にとって、これくらいのことは簡単だ」と難しい任務や作業をこなす胆力が求められるわけです。

逆に「探偵」は個人事業主や企業に所属することが多いです。そのため民間に属する会社員です。彼らは個人や企業の依頼を引き受けて「情報収集」に徹します。そこに余計な考察は加えずに、事実をクライアントに提示することを職務としています。たまに弁護士の立会のようなこともします。

「アセットにされた日本人とは?」

CIAに「アセットにされた」日本人は多いと言われています。なぜ「アセットにされた」という押し付けられたかのような表現を使うかと言いますと、誰も率先して「スパイになりたい」と思う人間はいないからです。そのため、CIAのオフィサーは、日本人に接触する時、主に二つの状況を使い分けて日本人を「アセット化」します。

フレンドリーで無害なアセット化

一つは、日常的なコミュニケーションでフレンドリーに接する。自らを大使館職員やCIAに属しているとは名乗らずに「友人」として接する状況です。日本においては「アメリカ出身で日本でタレントやYouTuber、ジャーナリスト、会社員として活動している人物」や「アメリカにルーツを持つ日本人」、「親米派日本人」などがこれにあたります。これは逆もしかりです。例えば「ロシア出身のタレントやYouTuber、ジャーナリスト、会社員」、「親露派日本人」などもそうです。彼らは情報保護などの概念やプロセスを理解していないため、友人関係になると機密情報まで拡散してくれます。

私がアメリカの「アセット化された人物」として気になる人はデー〇・スペ〇ター氏です。彼はテレビコメンテーターとして日本の世論構築を担っている人物でもあります。近年、彼のSNSなどが攻撃されるのは、主に反米日本人として他国に「アセット化」された人物によるものが大きいようにも思えます。以前、どこかのテレビ局でス〇クター氏の自宅が「初公開」されたことがあります。何十年と日本に滞在していて、彼の自宅が「初公開」だったのには違和感を覚えました。しかし、彼がアセット化された人物だなと感じたのは、彼の部屋にキー局分の台数のテレビモニターがあったからです。彼は仕事柄、全てのチャンネルのテレビを同時に見ていると言っていましたが、情報活動のようにも見えます。

皆さんの中にも「アセット化された人物」はいるかと思います。しかし、大体の場合これはそれほど私たちの日常に大きく影響するわけではありません。「アセット化」されていても、「ダメなものはダメ、違うものは違う」という自由はあるからです。もし、「アセット化されているかも?」と感じても、その人との良好な関係は維持しても良いと思います。

問題は次の「アセット化」のケースです。アセット化には非常に攻撃的な手法も存在します。

攻撃的なアセット化

ゴッドファーザーパート2でカジノホテルの認可をめぐって、マイケル・コルレオーネとギーリー上院議員が対立しました。そしてギーリー議員は、フレドが経営する売春宿で女性の死体とともに発見されます。ギーリー上院議員は、酒に酔っていて何も覚えていませんでした。トム・ヘイゲンは狼狽するギーリー議員を宥めて「友人になる」と提案します。

ここまで来るとわかるかと思いますが、娼婦殺害にギーリー議員は関与していません。どちらかといえば、マイケルとトムによる犯行です。しかし、ギーリー議員が娼婦を殺害したと思いこみ、弱みを握ることでマイケルは公聴会で優位に立てました。

これが「アセット化」です。

つまり攻撃的なアセット化の手法として、相手を脅迫するというものがあります。しかも多くの場合、アセット化される人物に非があるパターンが多いです。だが、その「非」も仕組まれている可能性があります。

しかし、多くの場合攻撃的なアセット化は、利害関係が付いて回ります。国家間交渉に関連する公人、私人、組織、企業などが攻撃的なアセット化に悩まされるでしょう。例えば、ハニートラップなどがその典型例です。通常、ハニートラップは性的行為による恋愛関係の傍らで、つい情報を漏らしてしまうなどが挙げられます。しかし、現実においてはこうしたハニートラップは私人に多くかけられるケースが多いです。例えば、先のフジテレビの上納問題も、裏を返せば日枝久氏が行うアセット化のようなものでしょう。

また中央官公庁の職員や政党職員などでも、男女問わず、WhatsAppやLINEなどを介して性的なやり取りを行うケースもある。あるいはXのDMを用いて「こんにちは、私の出身は台湾の〇〇です」と送り、引っかかるかどうかを試すボットも存在します。

とりわけ、一般人のXアカウントは要注意です。

私はXにて複数のアカウントを持っていますが、BOTの巧妙さを垣間見たことがあります。私の場合、あるアカウントでは「日本語と英語」を、あるアカウントでは「日本語のみ」を使用するなどで分けています。すると、日本語のみを使用するアカウントには、アジア系のハニートラップBOTがフォローし、DMを日本語で送ってきます。

一方で、日本語と英語を使っているアカウントですと、英語圏のハニートラップBOTがフォローしてきます。私の姿形や言動が女性的であることから、英語圏出身者を名乗る男性が「元気?」と送りつけてくることもあります。

一般にはインプレッション目当てのユーザーのような認識のされ方ですが、これはどういった人物がBOTに引っかかるか、あるいは数を撃ってどこかのBOTに当たればよいとする戦略です。

さて、なぜこうしたBOTやDMでのやり取りを話すかと言えば、こうしたやり取りは最終的に「実際に逢いましょう」という形に入ります。

「実際に会うこと」にあなたが同意すればアセット化まであと一歩なのです。

BOTやDMは次に「あなたの姿を教えて」や「あなたの裸を見たい」などとセクシャルワードが飛び交うことになります。それがエスカレートすると、顔出しで裸の写真や性器を見せつける写真を送るというケースがあります。

これでアセット化は完了です。

なぜなら、あなたの「全裸画像」が手に入ったからです。

あなたはBOTなどに弱みを握られたことになります。一般人で何の要職にもついていないならば問題はないでしょう。しかし、あなたが情報のアクセス権限を持っていたり、重要な役職を担っていれば要注意です。敵性勢力は、あなたが所属する企業や組織を調べ、あなたのことを調べ上げ、そしてBOTに引っかかっているかどうかも確認するでしょう。そして巧妙に近づき、脅迫します。

ロマンス詐欺などの手口に似ていますが、アセットを作り出すうえでこれほどコストの低いやり方もないでしょう。

神谷奈緒の事件簿でアセット化された人

これらに照らし合わせてみると、『神谷奈緒の事件簿』の中では「犯人たち」は「ネットワーク」という謎組織にアセット化されています。犯人たちはネットワークの殺人代行部門である「女王蜂」のエージェント(サイネリアや高峯のあなど)にアセット化され、殺人を引き起こしているとも言えます。

典型的な例では「異人館村殺人事件」の犯人です。この犯人は幼少期のトラウマを「女王蜂」に利用され、アセット化されています。

また「パノラマ島殺人事件」における太陽神霊教会では、与党総裁候補が教祖と秘書を通じてアセット化されていましたね。あるいは信者たちも教会の裏にある某国にアセット化された人々であるといえるでしょう。しかし、これら某国のアセットはネットワークのアセットたちによって破壊されていきました。

時間城殺人事件」ではイギリス特殊部隊出身の人物が、ネットワークにアセット化されており、金田一七四と死闘を繰り広げる場面もあります。七四も正直な話が、母親にアセット化された要員であるかもしれませ。ただし、母親の目的は組織に属さないローンウルフ型のテロ活動でしたので厳密に「アセット化した」とはいえません。

フィクション世界のオシント、シギント、ヒューミント

また、フィクションの中の探偵は、俗にいうスパイやエージェントが行う情報活動を行います。

情報活動とは、公開情報を調査し、分析する「オシント」、電波で流れる情報の収集を行う「シギント」、そして現地調査や交渉、会合などで情報を収集する「ヒューミント」のことをいいます。

オシントやシギントは簡単ですが、ヒューミントはかなり難しいとされます。なぜなら、ヒューミントは多くの場合、「敵地での任務」を必要とするからです。例えば有名なヒューミントの事例に「ビンラディン暗殺」があります。アメリカの情報機関であるCIAはビンラディンの連絡係の行動記録を分析(オシント)し、さらに彼の電話やメールなどの記録を収集(シギント)する、衛星で監視する(シギント?)などを実施し、ビンラディンの潜伏先の特定を行っていました。潜伏先への張り込みや監視などを人間を使って行った可能性もあり、これがヒューミントです。

電波傍受は遠隔でもできますが、人間を送り込み、対象を監視、発見するという作業は「危険」が伴います。現実の「探偵業」もヒューミントが多いといえます。浮気調査や行動調査、法人調査などでは、身一つで対象を尾行し、動向を調査します。時折、調査対象とトラブルに見舞われたり、暴力を振るわれることもあります。法人調査の場合は、産業スパイとの間で時に死と隣り合わせのやり取りを行うケースもあるようです。

そのため、ヒューミントは忍耐力や体力が必要となってくるわけです。

007シリーズは映画の9割が「ヒューミント」を描写しています。彼はオシントやシギントによって得た情報をMから伝え聞き、ヒューミント活動を行うために敵地に派遣されるわけです。当然ながらそこでは現地の工作員(スパイ)と接触したり、銃撃戦になったり、追跡劇を繰り広げたりするわけです。

名探偵コナンにも、スパイやエージェントが描写されることがありますが、ホームズに憧れる江戸川コナン自身も情報活動を行います。彼は灰原哀が現れるまでは、阿笠博士のデバイスを用いたオシントとシギントを行っていました。例えば新聞のバックナンバーで公開情報を分析(オシント)したり、蝶ネクタイ型変声機や犯人追跡メガネなどの技術を用いてシギントを行なうわけです。しかし、灰原哀がオシントやシギントを担うケースが増えるようになりました。

コナンはヒューミント活動のみに専念できるようになったことで、事件の規模もかなり大きくなっていきます。彼は現地に赴き、時に人をだましたり、隙間から家に忍び込むなどして情報を収集するだけになったわけです。

神谷奈緒の事件簿におけるオシント、シギント、ヒューミント

神谷奈緒の事件簿において、奈緒は「ヒューミントの達人」ともいえます。元々金田一少年の事件簿は、ヒューミント特化の物語です。ハジメちゃんは、常に事件現場に居合わせているため、敵地に乗り込んだような状況になるわけです。奈緒もハジメちゃんと大差ありません。

金田一シリーズにはオシントとシギントの概念が実際のところあまりありません。公開情報を分析するオシントは一部ではあるものの、物語に割いている割合も、多くがヒューミント活動だけです。コナンと異なるのは、ハジメちゃんの場合はヒューミント活動の中で、オシントとシギントを無力化できる、推理を行なうことでしょう。そういった意味では、金田一少年の事件簿は推理漫画といえ、名探偵コナンはどちらかといえばスパイ漫画といえます。

実際、神谷奈緒の事件簿では、七四もオシントとシギントを行ないません。彼の場合は公安警察だった母親にオシントの手法を学んでおりますが、現役のテロリストや反社会勢力の公開情報は記憶しているだけです。ノベルス版「獄門島殺人事件」でも、記憶していた情報のみで、とあるテロリストを分析する描写があります。彼の場合、現役の情報のみに特化しているため、新興勢力や新たなテロリストの情報はまったくもっていない状態です。

しかし、七四や「女王蜂殺人事件」に登場したある人物が「影のゲーム」と称する戦いを繰り広げていることがわかります。ネットワークのトップであるプロデューサー、女王蜂のリーダーであるサイネリアは、自分が発する一言や行動などで連鎖反応的なバタフライエフェクトを生み出すことに長けています

この人にはこういえば、彼・彼女は勝手に人を殺すだろう」という行動誘導を簡単に行うことができます。電話を一つかけると、戦争や紛争を引き起こすこともできます。彼らはオシント、シギント、ヒューミントを駆使して、複雑な人間の行動を読むことに長けています。ここを崩せば、こういう行動を起こすということを知っているのです。

実際、奈緒や七四の推理力や洞察力にはこれが含まれています。七四が「獄門島殺人事件」で真犯人を死に至らしめたのも、真犯人に対して「何を言えば絶望して死んでくれるか」を知っていたからです。ここに七四がネットワークのごく一部のメンバーと類似した能力を持っていることが垣間見えます。そして奈緒も「七四の行動」をあえて止めませんでした。奈緒もまた、七四が真犯人に対してどう行動するのかを分っていたことになります。

日本の情報機関

日本における情報機関の中で有名であるのに露出度が低いのが「警視庁」に所属する「公安警察」です。役割としてはアメリカのFBIに近いようです。

正確には「警視庁警備局公安部」で、警備局の指揮下にあります。道府県には警備部公安課が設置されています。そして所轄では警備課公安係と呼称されています。

公安警察は大きく分けると、国内のテロ・反社会勢力を捜査する「公安」と国外のテロ・反社会勢力・スパイを捜査する「外事」に分かれます。

また公安機動捜査隊という組織も存在し、爆弾テロ、NBCテロなどを捜査する部門をいいます。この公安機動捜査隊は絵画で発生した爆弾テロでも派遣されることが多いそうです。

また公安警察は刑事警察と対立すると言われていますが、実際は非常に良好な関係を保つ場合が多いです。刑事警察の職員は公安警察の職務が可視化されておらず、秘密扱いであるため「遊んでいるかもしれない」という偏見を持つ場合があります。しかし、公安警察は反論せず、刑事警察をねぎらいます。

なぜなら、公安警察にとって一番の情報源は刑事警察の職員だからでしょう。公安警察は「英語スキル」や「外国語スキル」が必須となるため、刑事警察が外国人の取り締まりなどで悪戦苦闘する際に、通訳や文書の作成などを手伝います。するとそこで恩を感じた刑事警察の職員が、秘匿情報をつい話してしまうこともあるそうです。

神谷奈緒の事件簿における「公安警察」

神谷奈緒の事件簿では、しばしば公安警察が描写されます。特に顕著であったのは「雪夜叉伝説殺人事件」後の「のあと公安部長の会話」です。このことから、公安警察はネットワークの存在をある程度掴んでいることがわかります。

東郷あいは内閣調査室のメンバーとして描写されます。現実における内閣情報調査室は、法務省・公安調査庁、防衛省・自衛隊の情報本部、警察庁(公安部や警備局)、外務省「国際情報統括官」などが収集した情報を、さらに整理し、分析、精査して内閣総理大臣と内閣官房長官に報告します。

そして内調も独自にオシントやシギント、ヒューミントを実施します。

ただ、日本におけるこうした情報機関において優勢なのは公安警察です。事実、内閣調査室には公安からの出向職員が多いとされています。公安警察と内調の違いは、その権限や「国家優先」か「国民優先」かの違いです。

警察は国民に加担する組織です。国民生活の安全のために活動し、その権限も監視、捜査、逮捕など様々あります。一方で内調は時の政権の政策スタッフとして機能します。つまり国家政策を円滑に進めるために活動し、その権限は警察よりは限られます。しかし官房機密費の使用や新型技術の導入、使用、特定機密の活動など、警察以上の秘密活動を行うことができます。

そんな中、公安捜査官として名前が上がるのが七四の母親である金田一琴子です。彼女は公安警察の中でも「外事」に所属する捜査官であることが匂わせられています。また、アメリカ・中東アフリカなどに赴いていたことから、少なくとも「英語」や「アラビア語」に堪能であることが伺えます。

琴子はゲリラ戦術やCQBなどにも長けています。公安警察は警察学校から直接、雇用されるというわけではありません。多くが何らかの職務を経てスカウトされ、試験を受けたりします。琴子の場合は、警察学校にて初任者課程や補習科課程で優秀な成績を修めており、交番勤務時代の後、選抜訓練を受けて数少ない特殊急襲部隊の女性隊員になったという経緯があります。その後、海外の特殊部隊間の交流の中でアメリカやイギリスで訓練プログラムに参加し、サバイバル術を取得したこともあります。特に琴子は狙撃術の才能があり、作中でも赤井秀一顔負けのスナイピングを披露します。

特殊急襲部隊を数年所属していると、彼女が英語とアラビア語ができるということから公安警察にスカウトされるわけです。刑事警察出身やその他の部署出身者からすれば、琴子はほぼ化け物のような能力を持ってます。挌闘戦でも、銃撃戦でも、琴子に勝てる人間はいません。そして「外事別班」のリーダーになりました。

彼女の実績の一部はネットワークの一組織である「死仮面」のメンバーたちからうかがうことができます。ある「時間城殺人事件」に登場する死仮面のメンバーはアルジェリアでの任務中に、琴子に足を狙撃されてしまいます。

実は、この「アルジェリアの任務」というのは2013年に発生した「イナメナス事件(アルジェリア人質事件)」がモデルです。この事件は、アルカイダ系武装組織「イスラム聖戦士血盟団」がアルジェリア東部の天然ガス精製プラントを襲撃した事件です。この事件では日揮社員や関連企業である日本人10人が死亡しました。

「死仮面」のメンバーはイスラム武装組織を指導し、石油プラントの襲撃を教唆しました。それを危険視した琴子が独自の裁量で逃亡中のメンバーを狙撃し、砂漠に放置しました。琴子がなぜ死仮面のメンバーを殺害しなかったのかは不明ですが、彼女にとってはネットワークのメンバーとして初めて確認できた構成員であったため、泳がせるという気持ちがあったのかもしれません。あるいは琴子は日本人を死亡させてしまい、一矢報いようと狙撃した可能性もあります。(そのスピンオフ書いても良いかもしれませんが

金田一七四の強さ

そんな彼女に育てられた金田一七四という人間はどれくらい強いのでしょうか?

七四は銃の腕が良いとはいえません。扱うことはできますが、銃を対象にあてることは苦手です。彼は銃を持っていても、近接挌闘戦に持ち込もうとします

琴子と異なるのは、七四は異常なまでの動体視力と洞察力を持っているということです。例えばコナンの蘭姉ちゃんが弾丸を避ける描写がありますが普通の人間であの動きは不可能です。何せ銃声を聞いてから避けるというのは「自殺」に等しいです。

七四は何をもって弾丸を避けるかというと、そもそも銃を持つ専門家というのは予測射撃というものを行ないます。狩猟は獲物がどこに移動するのかをあらかじめ予測して射撃します。つまり銃のプロに狙われれば、ある程度行動を予測されるわけです。七四はその予測射撃をさらに予測します。射手の癖や手の震えや力み、銃口の向きなどを見ながら、自分の行動も可変式に予測不能なものにしていきます。すると、撃ったとしても射手は予想を外してしまい、銃弾が外れるわけです。

七四の特異な近接挌闘ですが、これは現状、「負傷して引退したハンデのある特殊部隊員」や「特殊訓練を受けた元警察官」に通用するレベルです。

神谷奈緒の事件簿シリーズの奈緒はどれだけ強いの?

奈緒は格闘戦を全く行っていませんが、メンタルおばけではあります。そもそも殺人事件に何度も巻き込まれており、親しい友人が死んだりもしているので精神力だけなら鋼です。七四は奈緒とくらべるとかなりメンタルが弱いです。

また体力や身のこなしは「オウムアムア」をモデルにしていますので、抜群です。神谷奈緒の事件簿シリーズでは描かれていませんが、実はアイドル業の傍らアクション女優としてスタントもこなしています。

七四のように実践での経験は豊富でないものの、生存のためなら非殺傷的なトリッキーな格闘戦ならできるよう設定されています。

主人公補正もあるので、作中最強かもわかりませんね。

今後も、学んで、創作していきたいなと思います。

金田一七四の母、中東

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この記事を書いたたわけ

京都伏見で産声を上げ、父の転勤にともない首都に定住した似非京都人。東京中野に憧れて古本屋ECを画策している。自分のことを京極夏彦だと思っているが、思想は横溝正史である。サークル劇団偶像の中の人。ミステリーやホラーや犯罪ジャンルの映画や小説など。

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